地球写真家 被災地を歩く 講演会@名古屋

11月5日午前10時より、名古屋市内にて石井友規の講演会が行われた。

主催者からの紹介ののち1時間あまり、この夏196kmを歩いて見た三陸の被災地の風景と出会った人々の写真を見せながら、旅で感じたことを石井友規はありのままに語った。

会場にいた人々のほとんどは今回の地震による被災地を見たことがないようで、石井友規の話を大変楽しみにしてくださっていることが、雰囲気でわかる。
被災地の報告会は様々な方によって行われているが、行政主催のそれなどは敷居が高い印象でなかなか足を運びにくい。今回は特に、石井友規がするということで興味を持ってくださった方が多いのだろう。

石井友規自身は、オーストラリア、バイオディーゼル、アラスカ...等の報告会とは違う側面を持つこの報告会については、考え抜いていたに違いない。石井友規写真事務所のスタッフにも事前に内容の詳細は知らされていなかったので、大変興味深くこの旅のもたらしたものを聴くため会場へ向かった。

様々なメディアが伝える被災の凄まじい大きさ、そんな光景もたくさん見た。
しかし、そういった写真を見せて、驚かせたり滅入らせたりすることをしたくはない、と、彼は言った。

そして、旅で出会った子どもたちの笑顔、それでも美しい三陸海岸の風景とそれを愛する人々の営みを中心に、普段あまり他で見られないような写真を見せながら語った。テント、コンロ、水、米、カメラ等総重量30㎏以上のザックを背負って歩く中で早々にできた足裏の水ぶくれの話など、彼ならではの楽しい語り口でのトークに開始前の少し緊張した聴衆の面持ちもいつしかにこやかにほぐれていく。

普段私たちが目にするのは、いかに凄まじい破壊だったか、いかに人々ががんばっているのか、という情報が多い。
被災して破壊されたことも事実。がんばっておられるのももちろんそうだ。
しかし、彼が行った5ヶ月後にも、もう既に5ヶ月もの私たちと変わらない日々の営みが繰り返されている。苦しい悲しいだけでなく、彼らものんびりしたり街全体で何かをして笑ったり楽しんだりして生きている。子どもたちもそうだ。
そんな普通の人々や子どもたちの風景を見せてもらうことで、東北の方々は、大変だからと憐れんで何かをしてほしいのでなく限りなく普通に遊びにきてほしいのだ、という心を非常に実感を持って知ることができる。

おそらく彼自身が被災地を見て感じたことは、講演で話した何十倍もあったことだろう。
時間がなくて話せなかったこともたくさんあったに違いない。
しかし、シンプルに、美しい東北に行ってみたい、東北に住んでいる優しい人々に会ってみたい、と思わせてくれる、さすが地球写真家の彼らしい、愛情あふれる写真とあたたかな印象が残る講演でたいへん良かった、と思う。


ちなみに、陸前高田の復興支援イベントの「きてけらっせあ!」の意味は、『いらっしゃいませ』です。